【洋楽で知る世界のいま】第13回:教科書が選んだ名曲たち〈後編〉

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前回に引き続き、東京書籍の英語教科書『New Horizon』に収録されたユニバーサル音源の楽曲解説をお届けします。第二弾の今回は、スティーヴィー・ワンダー、テイラー・スウィフト、イディナ・メンゼルが歌う3曲を取り上げます。時代もジャンルも異なる3組のアーティストですが、いずれも授業で取り入れやすい要素を持つ名曲ぞろいです。本記事は教材補助の目的で作成したものですが、音楽好きの方やお子さんの英語学習が気になる保護者の方にも楽しんでいただけるよう一般公開しています。前編をまだご覧でない方は、ぜひそちらもあわせてお読みください。

4. スティーヴィー・ワンダー – 「I Just Called to Say I Love You」

《 アーティスト解説 》

スティーヴィー・ワンダー

スティーヴィー・ワンダーは、1950年にアメリカのミシガン州で生まれた歌手・作曲家・マルチ奏者です。生まれつき目が見えませんでしたが、幼いころから驚異的な音楽の才能を発揮し、11歳でレコードデビューを果たしました。「リトル・スティーヴィー・ワンダー」の名で世に出た彼は、その後ピアノ、ハーモニカ、ドラムなど多数の楽器を独学でマスターし、自ら作曲・演奏・プロデュースをこなすアーティストへと成長しました。「Superstition」「Sir Duke」「Overjoyed」など、時代を彩る数々のヒット曲を生み出し、グラミー賞を25回受賞する偉業を成し遂げています。音楽だけでなく、人種差別や障害者への偏見と闘うアクティビストの顔も持ち、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の誕生日をアメリカの祝日にするための運動を主導したことでも有名です。その活動と音楽は今も後進のアーティストに影響を与え続けています。


《 アーティストのトリビア 》

逆境を越え、13歳で全米1位へ

スティーヴィー・ワンダーは生後間もなく保育器内での過剰な酸素投与が原因で失明したと言われている。しかしその境遇をものともせず、13歳のときに発表した「Fingertips Part 2」が全米チャートで1位。スターの座に上り詰めた。

グラミー賞25冠

グラミー賞を生涯で25回受賞しており、これはソロアーティスト史上最多クラスの記録のひとつ。1970年代には3年連続で最優秀アルバム賞を受賞する前人未到の快挙を達成している。

一曲の歌が、祝日を生んだ?

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の誕生日を祝日にするための運動を主導した際、スティーヴィー・ワンダーはその活動を支援するために「Happy Birthday」を書き下ろした。この曲は運動のアンセムとなって1983年の祝日制定に貢献。現在では誕生日ソングのスタンダードに定着している。


《 楽曲解説 「I Just Called to Say I Love You」 》

何でもない日に、愛を伝えよう

1984年にリリースされ、全米・全英ともにチャート1位を獲得した大ヒット曲です。映画『ウーマン・イン・レッド』のために書き下ろされ、翌年のアカデミー賞最優秀オリジナル歌曲賞を受賞しました。タイトルを直訳すると「ただ愛していると伝えたくて電話した」という意味で、特別な記念日でも何でもない普通の日に大切な人へ愛を伝えることの素直な喜びを歌っています。歌詞には「No New Year’s Day」(お正月でもなく)「No Valentine’s Day」(バレンタインデーでもなく)など、季節の行事にまつわる言葉が散りばめられており、歌いながら自然に語彙を広げることができます。シンプルなメロディーと明快な歌詞は英語学習の入門に最適です。


《 楽曲トリビア 「I Just Called to Say I Love You」 》

アカデミー賞の舞台で、社会にメッセージ

1985年のアカデミー賞授賞式でトロフィーを受け取ったスティーヴィー・ワンダーは、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)に反対するスピーチを行った。音楽の祭典の場でのこの行動は、聴衆の記憶に深く刻まれている。
※画像は2020年には人種差別への抗議を込めて発表された「Can’t Put It In The Hands Of Fate」。

今だから新鮮?「電話で愛を伝える」

この曲はリリースから40年以上が経った現在もプロポーズや結婚記念日など愛を伝える特別な場面で使われている。1984年当時はまだ携帯電話が普及していなかったが、「電話して愛を伝える」というシンプルな行為は、デジタル全盛の現代においてもかえって新鮮なメッセージとして響いている。

楽曲誕生の裏に、日本人アーティスト

この曲はもともと、スティーヴィー・ワンダーと交流のあった日本の兄弟デュオ「ブレッド&バター」のために書かれた曲だった。当初はサビの「I just called to say I love you」という一節しか歌詞がなかったが、映画『ウーマン・イン・レッド』での使用が決まりスティーヴィー自身が歌うことになった。ブレッド&バターは後に松任谷由実が日本語詞を手がけた「特別な気持ちで」としてカバーしている。

5. テイラー・スウィフト – 「You Need to Calm Down」

《 アーティスト解説 》

テイラー・スウィフト

テイラー・スウィフトは、1989年にアメリカのペンシルベニア州で生まれたシンガーソングライターです。10代からソングライターとしての腕を磨き、14歳でナッシュビルに移住してカントリーミュージックの世界に飛び込みました。16歳でのデビューアルバムは全米で大ヒットし、若手カントリーアーティストの中で際立った存在感を放ちました。その後ポップス路線へと音楽スタイルを大きく転換し、「We Are Never Ever Getting Back Together」「Shake It Off」「Cruel Summer」などのヒット曲を生み出しています。自らの経験や感情をそのまま歌詞にする独自のスタイルがファンの共感を呼び、現在は世界で最も影響力のある音楽アーティストのひとりに数えられています。2023年から行ったワールドツアー「The Eras Tour」は各地で記録的な動員数を誇り、その経済効果は各国のGDPにまで及んだと報告されるほどの社会現象となりました。


《 アーティストのトリビア 》

歌詞に隠された、ファンへのメッセージ

テイラー・スウィフトは自分の楽曲の歌詞の中にファンへのメッセージや謎解き要素を隠すことで知られており、ファンは「イースターエッグ」と呼ばれるこれらのヒントを熱心に探し出すことを楽しんでいる。

コンサートで、街の経済まで動かした?

2023年から2024年にかけて行われた「The Eras Tour」は、コンサートツアー史上初めて総収益20億ドル(約3,000億円)を超えた音楽史に残るツアーとなった。各公演地では地元経済が活性化し「スウィフト経済」とも呼ばれた。

過去のアルバムを、もう一度録音?

テイラー・スウィフトは自身の楽曲の権利を守るため、過去のアルバムをすべて再録音して再リリースする前例のない取り組みを行っている。この試みはアーティストと音楽業界の力関係に新たな問いを投げかけるものと受け止められた。


《 楽曲解説 「You Need to Calm Down」 》

2019年にリリースされた楽曲です。SNSやインターネット上で他者を攻撃・批判する行為に対して「落ち着いて」と呼びかける内容で、寛容さと多様性を尊重するメッセージが込められています。LGBTQ+の人々への支持を強く打ち出した作品でもあり、ミュージックビデオには著名なLGBTQ+アーティストが多数出演しています。作中では「You need to calm down」(落ち着いてほしい)というフレーズが繰り返され、日常会話でも使えるカジュアルな英語表現が随所に登場します。「shade」(嫌みや皮肉)や「sunshine」(明るさ・希望)など英語のスラングや比喩表現も豊富で、現代的なテーマを英語で学びながら授業での討論やディスカッションにも活用できます。


《 楽曲トリビア 「You Need to Calm Down」 》

友人の問いかけから生まれた一曲

この曲のインスピレーションは、友人から「あなたは同性愛者の権利についての立場が明確でない」と指摘されたことだったとテイラー自身が語っている。何気ない一言が、強いメッセージを持つ楽曲の誕生につながった。

一曲が、70万人以上を動かした?

この曲の発表に合わせてテイラーはLGBTQ+の権利を守る法律の制定を求める署名活動をChange.orgで開始し、70万人以上の署名を集めた。社会へ積極的に働きかけるその姿勢は、多くの人々の心を動かした。

Lucky Number

この曲がきっかけでLGBTQ+支援団体「GLAAD」への寄付が急増した。テイラーの好きな数字「13」にちなんだ13ドルの寄付が相次ぐなど、音楽が持つ影響力の大きさを物語る出来事となった。

6. イディナ・メンゼル – 「Let It Go」

《 アーティスト解説 》

イディナ・メンゼル

1971年にアメリカのニューヨーク州で生まれた女優・歌手です。もともとブロードウェイの舞台女優の道で頭角を現し、ミュージカル『レント』や『ウィキッド』での主演で高い評価を受けました。特に『ウィキッド』では緑の肌を持つ魔女エルファバを演じ、その圧倒的な歌唱力でブロードウェイ最高峰の賞であるトニー賞を受賞しています。2013年に公開されたディズニー映画『アナと雪の女王』で女王エルサの声を担当し、主題歌「Let It Go」を歌って一躍世界的な知名度を獲得しました。舞台と映画の両方で成功を収めた稀有なアーティストであり、その豊かな声量と表現力は業界内外から絶大な信頼を集めています。


《 アーティストのトリビア 》

15歳から、歌を仕事に

イディナ・メンゼルは15歳の時に両親が離婚したことをきっかけに結婚式やユダヤ教の成人式の歌手の仕事を始め、その収入でニューヨーク大学の学費を賄いながら演技を学んだ。華やかなブロードウェイの舞台に立つ前から、歌で生計を立てながらキャリアを築いた苦労人だ。

「エルファバ」といえば、イディナ?

ブロードウェイミュージカル『ウィキッド』でのイディナの歌唱は伝説的とされており、彼女が降板した後も「イディナのエルファバ」を求めるファンが後を絶たないほどの存在感を残している。

表現する力を、次の世代へ

2010年に恵まれない環境の少女たちに芸術を通じた自己表現の場を提供する非営利団体「A BroaderWay Foundation」を共同設立した。舞台や映画の枠を超えた社会貢献活動も彼女の大きな魅力のひとつだ。


《 楽曲「Let It Go」の解説 》

2013年公開のディズニー映画『アナと雪の女王』の主題歌として制作され、翌年のアカデミー賞最優秀オリジナル歌曲賞とグラミー賞最優秀映像作品楽曲賞に輝いた曲です。雪と氷を操る力を持ちながらその力を恐れて心を閉ざしていた女王エルサが、すべてをありのままに受け入れて自分らしく生きることを決意する場面で歌われます。タイトルの「Let it go」(もう手放そう)には他者の目や評価を気にすることをやめ、自分自身を解放するメッセージが込められています。なかでも「the cold never bothered me anyway」(寒さなんてへっちゃら)という結びのフレーズは、エルサの覚悟と解放感を一言で表した名言として世界中のファンに愛されています。全体的に平易な単語で構成されているのに加え、感情表現や自己肯定に関わる言葉を歌って身につけられることから、英語教育の場でも重宝されています。


《 楽曲トリビア 「Let It Go」 》

18年ぶりの快挙

全米チャートで最高5位を記録し、1995年の映画『ポカホンタス』主題歌「Colors of the Wind」以来、18年ぶりにトップテン入りしたディズニーアニメの楽曲となった。アカデミー賞とグラミー賞の両方を受賞した点でも異例の快挙だった。

悪役だったエルサ?

この曲はエルサの設定が悪役だった制作初期に生まれた。しかし曲が完成した際、その歌詞があまりにも共感を呼ぶ内容だったため監督は「エルサを悪役にはできない」と判断。彼女のキャラクターを根本から見直し、物語そのものを作り直すことを決断した。

世界25言語で歌われた「Let It Go」

25以上の言語に翻訳され、それぞれの言語のネイティブ歌手が吹き替えを担当した。日本語版「レット・イット・ゴー~ありのままで~」は松たか子が歌って爆発的なヒットとなった。「ありのまま」という言葉はその年の新語・流行語大賞にもノミネートされた。

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