【洋楽で知る世界のいま】第12回:教科書が選んだ名曲たち〈前編〉――

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カーペンターズ、ザ・ビートルズ、ルイ・アームストロングを読み解く
英語の授業でポップスが教材として使用されていることは、多くの方がご存知かと思います。しかし実際にどんな曲が使われているかとなると、意外と知らないのではないでしょうか。
東京書籍の中学英語教科書『NEW HORIZON』には、長く親しまれてきた海外の名曲が収録されており、歌を通じて英語を学ぶ教材として活用されています。本記事はそうした楽曲のアーティストや背景を深く知ってもらうための補助教材として作成したものですが、音楽好きの方、お子さんの英語学習が気になる保護者の方にも広く楽しんでいただけるよう一般公開しています。
今回はその中から6曲を2回に分けて、アーティストと楽曲それぞれの解説をお届けします。第一弾はカーペンターズ、ザ・ビートルズ、ルイ・アームストロングの3曲。残る3曲は来月公開予定の第二弾をお待ちください。

1. カーペンターズ – 「Sing」

《 アーティスト解説 》

カーペンターズ

カーペンターズは、兄のリチャード・カーペンターと妹のカレン・カーペンターによって1969年にアメリカ・カリフォルニア州で結成された兄妹デュオです。兄のリチャードは作曲・編曲・プロデュースのすべてを手がけ、カーペンターズのサウンドを作り上げた音楽的な中心人物でした。妹のカレンはその深みのある温かな歌声で聴く人を魅了し、二人三脚で数多くのヒット曲を生み出しました。「Close to You」「Top of the World」「Yesterday Once More」など、1970年代を代表する名曲の数々はアメリカだけでなく日本でも絶大な人気を誇り、来日公演のたびに多くのファンを熱狂させました。カレンは歌声だけでなく、ドラムの演奏者としても本格的な実力を持っていましたが、残念ながら1983年に32歳という若さでこの世を去りました。リチャードはカーペンターズの音楽を大切に守り続けており、その音楽は世代を超えて愛され続けています。


《 アーティストのトリビア 》

カレン・カーペンター

カレン・カーペンターはボーカルだけでなく、卓越したドラマーでもあった。当時、女性がドラムを叩くこと自体が非常に稀なことで、その腕前は当時の音楽ファンを驚かせた。バンドのドラムを自らこなしながら歌うスタイルも取っていた。
没後もさまざまなアーティストに多大な影響を与え続けており、各国の歌手が「理想の声」として名前を挙げることで知られている。

ゴールデンレコード

カーペンターズの楽曲は、NASAが1977年に宇宙に打ち上げたボイジャー探査機に搭載された「ゴールデンレコード」の選考候補にも挙がったと言われている(ゴールデンレコードは、宇宙人への”地球の音楽名刺”ともいえる金のレコードで、バッハやモーツァルトの名曲と並んで選ばれた、まさに人類を代表する音楽集)。

※画像引用元:多摩六都科学館


《 楽曲「Sing」の解説 》

SIng

「Sing」は1973年にリリースされ、全米チャートで上位に輝いた大ヒット曲です。もともとはアメリカの人気子ども番組『セサミストリート』のために作られた曲で、番組の中で子どもたちに「歌うことの喜び」を伝えるために書かれました。カーペンターズがカバーしてから世界的に広まり、今では子どもから大人まで幅広い世代に知られる名曲となっています。歌詞には「Sing a song, sing out loud, sing out strong」(歌を歌おう、大きな声で、力強く)というメッセージが繰り返され、歌うことへの喜びと自信を持つことの大切さが伝わってきます。英語の歌詞はとても短く平易な単語だけで構成されており、英語を学び始めたばかりの人でも意味を理解しやすい曲です。サビの部分では子どもたちのコーラスが加わっており、曲全体に明るく温かい雰囲気が漂っています。


《 楽曲「Sing」のトリビア 》

英単語

「Sing」の歌詞に使われている単語は約30種類ほどで、そのほとんどが中学1年生レベルの基礎英単語。シンプルな言葉だけで人の心を動かせることを証明した曲ともいえる。

グラミー賞

「Sing」はグラミー賞の最優秀レコード賞にノミネートされた。子ども向けに作られた曲がこの賞の候補に選ばれること自体、非常に珍しいことだった。

翻訳

日本語を含む複数の言語に訳されており、半世紀を超えた今も世界各国の子ども向け教育コンテンツに使われている息の長い曲である。

2. ザ・ビートルズ – 「Hello, Goodbye」

《 アーティスト解説 》

ザ・ビートルズ

ザ・ビートルズは、1960年にイギリスのリバプールで結成された4人組バンドです。ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの4人で構成されており、彼らの登場は「ビートルマニア」と呼ばれる社会現象を世界中で引き起こしました。活動期間はわずか10年ほどでしたが、「Let It Be」「Hey Jude」「Yesterday」など長く愛され続ける名曲をいくつも生み出しました。音楽スタイルも初期のロックンロールから、時代とともに実験的なサウンドへと大きく変化し続け、常に先を行く挑戦的な姿勢が高く評価されています。1970年に解散しましたが、その影響力は衰えることなく、結成から60年以上が経った現在も世界中でアルバムが売れ続けています。ザ・ビートルズなしに現代のポップミュージックは語れないとも言われるほどの存在です。


《 アーティストのトリビア 》

初めてのアメリカ

ザ・ビートルズが初めてアメリカを訪れた1964年、空港には約3,000人ものファンが詰めかけ、その様子はテレビで全国中継されるほどの騒ぎとなった。

音楽教育

4人は全員、正式な音楽教育をほとんど受けておらず、独学と仲間同士の練習でその才能を磨いた。

未発表音源

2023年、AIを活用して未発表音源を復元し、解散から50年以上が経った後に新曲を発表した。現代の技術が伝説のバンドをよみがえらせた出来事として国際的に広く注目を集めた。


《 楽曲「Hello, Goodbye」の解説 》

Hello, Goodbye

1967年11月にリリースされ、イギリスとアメリカの両方で週間チャートの1位を獲得した大ヒット曲です。主にポール・マッカートニーが作詞・作曲を手がけました。曲の最大の特徴は、「Yes(はい)/No(いいえ)」「Hello(こんにちは)/Goodbye(さようなら)」「Stop(止まる)/Go(進む)」など、反対の意味を持つ言葉のペアが歌詞の中に次々と登場することです。「あなたはノーと言うけれど、私はイエスと言う」というように、正反対のものが世の中には共存しているという考えがこの歌詞の根底にあるとも言われています。英語の反意語(反対の意味の単語)を覚えるのにぴったりの曲であり、歌いながら自然と英単語のペアを身につけることができます。また、曲の終盤では「Hela, heba, helloa」という、特定の意味を持たないユニークなフレーズが繰り返されます。これはザ・ビートルズがレコーディング中に思いついた即興のかけ声のようなもので、理屈抜きに口ずさみたくなる楽しさがこの曲の大きな魅力のひとつです。


《 楽曲「Hello, Goodbye」のトリビア 》

Music Video

「Hello, Goodbye」のプロモーションフィルムは、現代のミュージックビデオの原型とも言われており、映像で楽曲を宣伝するという手法を音楽業界に定着させた先駆的な作品のひとつ。

反対語

ポール・マッカートニーがこの曲を作ったきっかけは、スタッフとのたわいない会話だったと言われている。「白と黒、どちらが好き?」「黒」「僕は白」というような、反対の言葉を言い合うやりとりがそのまま歌詞のアイデアになったというエピソードが残っている。

発売時期

この曲が発売された1967年は、ザ・ビートルズにとってライブ活動をすでにやめていた時期にあたる。世界中からひっぱりだこのバンドがあえてコンサートを行わないという異例の決断が、当時大きな話題となった。

3. ルイ・アームストロング「What a Wonderful World」

《 アーティスト解説 》

ルイ・アームストロング

ルイ・アームストロングは、1901年にアメリカ南部のニューオーリンズで生まれたトランペット奏者・歌手です。「サッチモ」という愛称で多くの人から親しまれ、ジャズという音楽ジャンルを世界に広めた最大の功労者のひとりとして長く語り継がれています。幼い頃は大変貧しい家庭で育ち、学校もほとんど通えなかったと言われていますが、その境遇の中でトランペットと出会い、持ち前の才能と努力によって世界的な大スターへと上り詰めました。ハスキーで独特な声と豪快な笑顔が象徴的で、演奏中に即興でメロディーを作り変える「アドリブ」の技術は群を抜いていました。1960年代には「この素晴らしき世界」(What a Wonderful World)などのヒットを飛ばし続け、1971年に70歳でその生涯を終えました。没後も世界中でその録音が聴き続けられており、生誕100年を超えた現在も新しいファンが生まれています。


《 アーティストのトリビア 》

トランペット

アームストロングは子どものころ、廃品回収のアルバイトをして貯めたわずかなお金で中古のトランペットを購入したと伝えられている。

ニックネーム

「サッチモ」というニックネームは「Satchel Mouth」(大きな口)が縮まったもので、豪快に口を開けてトランペットを吹く姿に由来している。

63歳での快挙

1964年には「Hello, Dolly!」でザ・ビートルズの連続1位記録を止めてチャート首位に立ち、当時63歳での快挙として音楽界を驚かせた。


《 楽曲「What a Wonderful World」の解説 》

What a Wonderful World

「What a Wonderful World」(この素晴らしき世界)は1967年にリリースされました。青い空、白い雲、色とりどりの花、道で出会う人々の笑顔や握手など、日常の中にある小さな美しさをひとつひとつ丁寧に歌い上げた曲です。発売当初、アメリカでは当時の社会情勢を反映した激しい曲が流行しており、この曲はあまり注目されませんでした。しかし、イギリスでは大ヒットし、その後1987年にロビン・ウィリアムズ主演の映画『グッドモーニング、ベトナム』のサウンドトラックとして再び使われると、世界中で爆発的にヒットしました。歌詞に登場する単語は「sky」(空)、「trees」(木)、「friends」(友達)など中学1年生レベルの基礎的な英語ばかりで、聴きながら意味を確認しやすい曲です。「なんて素晴らしい世界なんだろう」という繰り返しのフレーズには、どんな時代にあっても身の回りにある幸せを見つけようというメッセージが込められています。


《 楽曲「What a Wonderful World」のトリビア 》

ベトナム戦争

この曲が発売された1967年はベトナム戦争の真っ只中で、アメリカ社会が暗く混乱していた時代だった。そんな時代にあえて世界の美しさを歌ったこの曲には、平和への強い願いが色濃く反映されている。

平和への想い

この曲はアームストロングが自ら強く録音を希望した曲だったと言われている。当初レコード会社はアメリカでの売上を見込めないとして消極的だったが、アームストロングの熱意が録音を実現させた。

象徴

この曲は平和や希望の象徴として各地のイベントで使われており、国連の式典やオリンピックの開会式など、特別な場面でたびたび流れる曲となっている。

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