日本の英語教育を変える挑戦が、ここから始まる。
ローンチイベントと出張授業を開催。

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2025年3月14日のメディア公開当日、UM English Lab.はローンチイベントを開催しました。

会場となったのは、東京都渋谷区立原宿外苑中学校です。同校にはメディアのローンチ前から本プロジェクトに参画いただき、プレ授業を実施させていただくなど、さまざまな形でご協力をいただいています。

原宿外苑中学校の3年生のみなさまのみならず、たくさんの教育関係者にもお越しいただいたイベントでは、UM English Lab.を運営するユニバーサル ミュージックでCEOを務める藤倉尚らが、本プロジェクトに込めた思いや設立の背景を語るプレゼンテーションを実施。また、特別ゲストをお招きしたトークセッションも開催しました。

盛りだくさんな内容となったイベントの一部をお届けします。

洋楽を通して「オーセンティックな学び」を提供する

最初に登場したのは、本イベントのMCを務めたお笑いトリオ・トンツカタンの森本晋太郎さん。

森本さんは、幼稚園から高校まで、すべての授業を英語で実施する都内のインターナショナルスクールに通っていたといいます。しかし、英語が全くしゃべれない状態で入学したことから、入学直後にはクラスメイトとも思うようにコミュニケーションが取れず、大きなストレスを抱え「英語が嫌いになりかけた時期があった」と振り返ります。
しかし、徐々に環境に慣れ始め、次第に英語でのコミュニケーションに喜びを見出すことに。

森本さん 「ゲームでもスポーツでも楽器でも、始めた当初はなかなかうまくできず、おもしろくないと感じる期間があると思います。でも、ちょっとずつできるようになると『楽しいかも』と感じる瞬間が来ると思うんです。

英語も同じだと思います。僕は強引にでも英語をしゃべらなければならない環境にいたので、なかば力技でそういうゾーンまでいきましたが、このUM English Lab. という試みは、みなさんを『英語って、ちょっとおもしろいかも』と思えるゾーンにまで連れて行ってくれるものなのではないかと思っています。

ですから、すでに英語が好きな人はもちろんのこと、いまは英語が苦手だという方も、ぜひ興味を持ってもらえれば嬉しいなと思います」

トンツカタン 森本晋太郎さん

イベントに参加した中学生たちにそう語りかけた森本さんに続いて登壇したのは、イベント会場にもなった渋谷区立原宿外苑中学校で校長を務める、駒崎彰一さんです(*2025年4月1日より渋谷区立代々木中学校の校長)。駒崎さんからは、同校がUM English Lab. に参画することになった経緯が語られました。

駒崎さんが着任した2021年以来、原宿外苑中学校は「よりよい学校教育を通して、よりよい社会をつくる」というテーマを掲げ、多様な地域団体、民間企業とコラボレーションした実践的な授業を実施してきました。

その背景にある思いを、駒崎さんは「この激動の時代の中で重要なのは、多様な他者とコラボレーションしながら社会課題の解決に向かっていくこと。やがて社会に羽ばたく子どもたちに、オーセンティック(*“本物” “真正”)な学びを提供したいと思い、民間企業などの力も借りながらさまざまな授業を実践してきた」と語ります。

そんな中で、ユニバーサル ミュージックからUM English Lab. への参画の打診を受けた駒崎先生。そのときのことを、こう振り返りました。

駒崎さん 「UM English Lab. の概要を聞いたとき、最新の洋楽を通して、生きた本物の英語を学べるだけではなく、楽曲の背景にある異文化に触れる格好の機会になると感じました。まさに、子どもたちにオーセンティックな学びを提供できるプロジェクトだと感じたので、喜んで参画させてもらうことにしました。

教育業界では、『よい学習コンテンツは自然に広がっていく』と言われています。UM English Lab. が発信するコンテンツは非常に質が高いと感じているので、今後さまざまな場所で活用され、広がっていくことを確信しています」

渋谷区立原宿外苑中学校 校長 駒崎彰一さん(イベント開催時。2025年4月より渋谷区立代々木中学校 校長)

ユニバーサル ミュージックは、なぜUM English Lab.を立ち上げたのか

続いてマイクを握ったのは、UM English Lab. を運営するユニバーサル ミュージックでCEOを務める藤倉尚です。

いまやたくさんの邦楽アーティストが所属するユニバーサル ミュージックですが、
「私がユニバーサル ミュージックの母体となった日本ポリドールに入社したころ、所属している邦楽アーティストは非常に少なく、洋楽アーティストの楽曲販売を中心に売上を立て、会社を成長させてきました」と藤倉は語ります。

ユニバーサル ミュージック合同会社 社長兼最高経営責任者(CEO) 藤倉尚

実際、1970年代、ユニバーサル ミュージックの前身である日本ポリドールの売上の40%が洋楽の販売によってもたらされ、マーケット全体としても多くの人が洋楽を聴いていたそうです。しかし、時代が下ると共に「洋楽離れ」が進み、ユニバーサル ミュージックの売上に占める洋楽の比率だけではなく、日常的に洋楽に親しんでいる人の数も大きく低下しているのが現状だと言います。

そのような状況にあって、若年層に洋楽に親しむ機会を提供するために立ち上げられたのが、UM English Lab.です。

藤倉 「洋楽離れが進んでいる理由は複雑で、一言で言い表せるものではありませんが、少なくとも50年前と比べて、アーティストの質が下がっているわけではありません。現在でも、素晴らしいアーティストによる、素晴らしい楽曲が生み出されています。だからこそ、10代のみなさんにそんな素晴らしい音楽を味わうきっかけを提供したいと思い、UM English Lab.を立ち上げました。

いまユニバーサル ミュージックという外資系企業の社長をやっていますが、中高生のころから英語が得意だったわけではありませんし、今も苦労しています。ですが、昔から洋楽は好きだったので、もし自分が中高生のころ、最新の洋楽を通して生きた英語が学べるUM English Lab. のような存在があれば少しは違ったのかもしれないな、と手前味噌ながら思っています。
UM English Lab. をきっかけに洋楽に興味を持ってもらい、その興味を英語学習にもつなげてもらえることを願ってやみません」

イベントでは、アニメ『怪獣8号』のエンディングテーマなどを手掛けたことで知られる、アメリカのバンド・OneRepublic (ワンリパブリック)からの特別ビデオメッセージが公開。自身の楽曲である「Nobody」や「Invincible」を聴いて、英語を学んでほしいと呼びかけた

藤倉に続いて、USM洋楽マネージング・ディレクター代行の佐藤宙が登壇。ユニバーサル ミュージックがUM English Lab. を通じて解決を目指す、3つの課題について触れました。

1つ目の課題は、藤倉も言及した「洋楽離れ」です。佐藤は「10代のうちに洋楽に出会い、親しむようにならなければ、その後年齢を重ねる過程で洋楽に出会っても、強い興味関心を抱きにくいというデータがある」とし、10代のうちに洋楽に触れてもらうため、学校教育において洋楽を活用してもらう手段として、UM English Lab. を立ち上げたと語ります。


UM English Lab. が解決を目指す2つ目の課題は、「英語力の低さ」です。スイスの教育機関
「EFエデュケーション・ファースト」の調査(2024年版)によると、英語を母語としない116カ国・地域のうち、日本人の英語力は92位、アジア23カ国・地域の中では16位という結果に。この結果からもわかる通り、日本人の英語力は決して高いとは言えず、「英語教育のシステムから変える必要があるのではないかと考えている」と佐藤は言います。

しかし、しばしばその労働環境が問題視されているように、教育の現場に立つ先生たちの労働時間は長時間にわたり、自ら教材を開発することなどを通して、新たな取り組みに挑みにくい環境になっていることも確かです。先生たちも「システム」の中で苦しんでいると言えるでしょう。「先生たちの過酷な労働環境」が、解決すべき3つ目の課題です。

佐藤 「これらの3つの課題を解決するために、UM English Lab. を立ち上げました。若いみなさんに最新の洋楽に触れることで、楽しみながら英語力を上げてもらうのみならず、私たちユニバーサル ミュージックが教材を作成し、それらを無料で提供することで先生たちの負担を少しでも軽くしたいと思っています。

ウェブサイトでは教材など、先生や保護者のみなさまにとって有益な情報を発信していきます。また、中高生のみなさんを含め、英語や洋楽に興味を持っている方々が楽しめるさまざまなコンテンツも発信したいと考えているので、ぜひ一度ウェブサイトをご覧いただけると嬉しいです」

ユニバーサル ミュージック合同会社 USM洋楽 マネージング・ディレクター代行 佐藤宙

Crystal Kayさん登場!「恐れず、楽しみながら英語を使ってみてほしい」

佐藤のプレゼンテーションが終わると、MC森本さんから「ここで、本日のスペシャルゲストに登場してもらいましょう」とアナウンスが。会場後ろの扉から自らの楽曲に合わせて登場したのは、歌手のCrystal Kay(クリスタル ケイ)さんです。

そこから、森本さんとケイさんによる、スペシャルトークセッションが開催されました。

神奈川県横浜市でアメリカ人の父と韓国人の母のもとに生まれたケイさん。家庭では日本語と英語を交ぜながら会話をしていたそうで、英語は常に身近な存在だったといいますが、英語を身につける上で重要な役割を果たしたのが音楽だったと振り返ります。

ケイさん 「アメリカンスクールに通っていたので、家庭でも学校でも英語に触れる機会は多く、どのように英語を身につけていったのかは覚えていませんが、間違いなく音楽の影響は大きかったと思います。親が聞いていた音楽のほとんどが洋楽で、それを一緒に聴いていたので、洋楽から英語を学んだ部分も大きいと思いますね」

幼いころから洋楽に親しんで育ったケイさんは、小学生になるころには歌詞カードを見ながらさまざまなアーティストの歌を歌っていたと言います。森本さんが「歌詞の意味がわかると、歌いやすさや歌い方が変わることってありますよね」と水を向けると、「間違いなくありますね。歌詞を知ることで、歌やアーティストとの距離が縮まるし、自分の経験を思い出しながら共感することも増えて、一気に音楽を聴くことが楽しくなる」とケイさん。さらに、洋楽「ならでは」の楽しみ方があると続けます。

ケイさん 「洋楽には社会的なメッセージを込めた楽曲が多いんですよね。だから、歌詞を掘り下げてみると『これってどういうことだろう』と気になることがあって、それが日本とは違う国の文化や社会のことを勉強しようという気持ちにつながるかもしれない。

それに、邦楽の歌詞には詩的な表現が多いですが、洋楽の歌詞って思ったよりシンプルでダイレクト。意外にわかりやすいものが多いので、まずは読むことにチャレンジしてみたらいいと思います。それが好奇心を刺激して、新しいことを学ぶきっかけになると思います」

ケイさんが幼少期に聴いていた洋楽としてMichael Jackson(マイケル・ジャクソン)の「Heal The World」を挙げ、
歌声を披露する一幕も。

トークセッションの終盤、「英語でのコミュニケーションを学ぶ上での一番大切なこと」を尋ねられたケイさんは、こんな風に答えました。

ケイさん 「失敗してもいいから、とりあえずしゃべっちゃうこと。しゃべってみないと始まらないので、勇気を持ってトライすることが大事。たとえば、好きな曲の中でよく使われている単語の意味を調べて、その言葉を会話の中で使ってみるとか。とにかく、気楽に英語を使ってみてもらいたいです。

UM English Lab.  は、私が学生だった20年前には考えられないほど素晴らしいプログラムだと思いますし、私がこの教材を使って授業をやりたいくらい(笑)。このプログラムを通して、みなさんが気軽に、楽しく、遊ぶように英語を身体に入れていってもらえるといいなと思います。英語を学ぶことは、みなさんの世界を大きく広げるはずなので、ぜひ頑張ってください」

ケイさんから学生のみなさんにメッセージが送られ、トークセッションは幕を閉じました。

教材の制作・監修者による、特別授業も開催

体育館でのプレゼンテーションやトークセッションが終了した後、ローンチイベントの舞台は教室へと移されました。

そこで開催されたのは、UM English Lab. が発信する教材の制作・監修を手掛けている、
吉川 佳佑さんによる特別授業です(吉川さんが教材に込めた思いなどを語った記事を公開しているので、そちらも併せてご覧下さい)。

授業では、Lady Gaga(レディー・ガガ)の「Born This Way」を題材にした教材を使用。発音や単語の意味を学ぶだけではなく、楽曲に込められた意図やメッセージを読み解く授業が展開されました。

授業を行う吉川佳佑さん

授業後、生徒たちに感想を尋ねてみると「洋楽を通して英語に触れることで、英語のより深い部分に触れられたような気がして、とても楽しかった」「これまでの授業でも冒頭に洋楽を聴いたり、歌ったりしていたが、改めて発音やリンキング(単語と単語がつながって発音されること)について学んでみると、新たな発見があった」という声が聞かれました。

さまざまなプレゼンテーションやCrystal Kayさんをお招きしたトークセッション、そして特別授業と盛りだくさんの内容で実施したUM English Lab. のローンチイベント。足を運んでいただいた教育関係者のみなさまからたくさんの期待の声をいただきましたが、もちろんプロジェクトはスタート地点に立ったばかりです。

これから、UM English Lab. では教育関係者や保護者のみなさま、そして洋楽や英語に興味を持つ子どもたちに向けて、さまざまなコンテンツを発信していきます。また、出張授業などの取り組みも実施して参りますので、みなさまからのご意見やご要望、「何か一緒に取り組みたい!」という声をお待ちしております(こちらのメールアドレス[um-english-lab@umusic.com]までお気軽に)。

Writing : Ryotaro Washio

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